薬師寺、そして『国家珍宝帳』2006/11/09 07:37

 薬師寺には、ひさしぶりに行ったのだけれど、印象がすっかり変っていた。  派手派手になってしまった。 高田好胤管主が始めた写経勧進によって失われ た堂塔を復興しようという事業は成功し、金堂、西塔、中門、回廊、大講堂が できた。 今も工事中の音がしており、回廊の延長も始まるらしい。 以前は 薬師三尊像の大きさとその磨きこまれた掃除の徹底ぶりに、圧倒される思いが したものだったが、お金集めに集中しているうちに、何か失ったものがあるの ではないかという気がした。 特別公開中の平山郁夫さんの「大唐西域壁画」 がある玄奘三蔵院伽藍という寺域にしても、一般公開を春・秋だけに限定する 必要がどこにあるのか、まったくわからない。

 午後3時、奈良国立博物館は、すごい行列で、一時入場制限中だった。 団 体は30分間、博物館のボランティア・ガイドによる「正倉院展」のセミナー を聞いてから、一般とは別に入場する。 ずっと並ばされている一般客に不満 も出るから、粛々と整列入場をとの指示であった。 入場制限が解除され、一 般客が入り始め、われわれも入った。 入場制限の影響で、中は割合に空いて いて、展示の配置もよく、思っていたよりじっくり鑑賞することができた。

 今年は天平勝宝8歳(さい・756年)の東大寺大仏への宝物献納から数えて 1250年目に当るという。 その年の5月2日に聖武天皇がなくなり、その四 十九日に、光明皇后が天皇遺愛の品々を大仏に献納したのが、正倉院宝物の始 まりなのだそうだ。 その目録である『国家珍宝帳』の現物、そこに記されて いる聖武天皇ゆかりの宝物が数多く出陳されている。 NHKの「新日曜美術 館」(10月29日)は正倉院宝物の秘密を、聖武天皇・光明皇后の愛情物語とし て紹介していた。