季刊『雷鼓』の終刊<等々力短信 第1125号 2019(令和元).11.25.>2019/11/25 07:03

 先月、第1125号がちょうど11月25日になると、ある友人が教えてくれた。  出している本人も気が付かなかったのだから、有難いことだ。 私が「同人誌」 のようなものと言う季刊『雷鼓』が9月15日に第101号をもって、惜しまれ ながら終刊になった。 1994(平成6)年9月15日の創刊だから、25年間に なる。 「書きたいことを書き、自分が読んでほしいと思う人に勝手にお送り する」と、小柴温子さんや岩本紀子さんが3人で創刊した第1号は6ページ、 執筆者4名だったそうだが、最終号は144ページ、百名を超える人が文章や俳 句、短歌、詩、そして表紙やカットの絵を寄せている。

 小柴さんと岩本さんの共通点は、恩師が高瀬兼介先生ということと、『月刊ず いひつ』に投稿していたことだったという。 岩本紀子さん編著の私家本『口 述の生活史 高瀬竹江さんの八十八年―生涯教育の先駆者 高瀬兼介先生の妻 の記録―』の題名が語るように、高瀬兼介さんは1961年に庶民大学としての 『通信教育大学講座』を創設、岩本さんはその第一回卒業生だった。 そこで 社会学を教わった中野卓教授が中心になった「生活史研究会」に入会し、その 指導で「他者の自分史」の聞き書きをまとめたのが、この本だ。 岩本紀子さ んは小柴さん亡きあと、編集・発行人として『雷鼓』を一手に引き継ぎ、夫君 譲さんがパソコンで全面的に協力してきた。 その大変なご努力を、忙しくも 楽しく過ごした年月、始まりがあれば終わりがある、と書いておられる。

 私は小柴さんが、1125号が11月25日になると言った友人の会社の同僚だ ったご縁で、『雷鼓』を短信と交換にずっと読ませてもらっていた。 岩本さん に請われ2012年11月の短信1041号「「地下鉄の父」早川徳次」を『雷鼓』2012 年冬74号を掲載してもらって以来7年、毎号の28編を書かせてもらった。 短 信はスペースの制約があるが、『雷鼓』では少し長い文章を綴っている。 3、 6、9、12月の15日発行、ひと月前の〆切はたちまちに来て、何を書こうか、 迷う。 最終101号の「ベアテの贈りもの」は、何と巻頭に掲載されていた。  巻頭は他に、78号「本を選ぶ―丸谷才一さんの書評」、95号「我々は「本が作 った国」に生きている」があった。 28編の主なテーマは、本と読書、憲法と 戦後民主主義、福沢諭吉と近代史、そして落語だ。 福沢では、父親としての 手紙、『蘭学事始』、明治十四年の政変、女性論・家族論。 落語では、落語の おかみさん、殿様落語、「落語研究会」半世紀、柳家小三治や瀧川鯉昇のマクラ など。

 岩本紀子さんの献身的なご努力で発刊されてきた『雷鼓』は、国立国会図書 館と千葉県立中央図書館には全巻揃いで収蔵されている。 私の書いた巻は若 干手元にあり、お読みになりたい方は、言って頂ければ、現物かコピーをお届 けできる。

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  季刊『雷鼓』 馬場紘二 執筆一覧

2012冬74号  「地下鉄の父」早川徳次

2013春75号  「憲法改正」で、思うこと

2013夏76号  福沢諭吉、父親としての手紙

2013秋77号  『風立ちぬ』「親父が生きた昭和」

2013冬78号  本を選ぶ―丸谷才一さんの書評

2014春79号  落語のおかみさんと「男女共有寄合の国」

2014夏80号  気骨の老人パワー、松永安左エ門

2014秋81号  柳家小三治の「まくら」

2014冬82号  俳句「退歩派」を継ぐ

2015春83号  「わが銀座おぼろげ史」

2015夏84号  シッポまで餡のあるたいやき

2015秋85号  殿様の出てくる落語

2015冬86号  福沢諭吉と『蘭学事始』

2016春87号  明治十四年の政変

2016夏88号  江戸・東京の水道―芭蕉とバルトン

2016秋89号  野口冨士男『風の系譜』を読む

2016冬90号  「縄文時代」はつくられた幻想・説

        雑学クイズ(と答え)…難読苗字・地名

2017春91号  アーネスト・サトウと江戸城無血開城

2017夏92号  読み書き自伝

2017秋93号  再建された大磯の旧吉田茂邸

2017冬94号  『「私」を受け容れて生きる』   2018春95号  「我々は「本が作った国」に生きている」

2018夏96号  福沢諭吉の女性論・家族論

2018秋97号  「落語国新聞」

       秋田魁新報8月2日投稿記事「犬養らの足跡 思いはせ」(部分)

2018冬98号  「落語研究会」半世紀・六百回

2019春99号  天覧相撲の時を共に

2019夏100号  瀧川鯉昇のマクラ

2019秋101号  ベアテの贈りもの

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