古今亭菊之丞「法事の茶」の本篇2016/11/28 06:20

 一八さん。 お客様はどなた? 二階へ行きゃあ、わかる。 名前がわから ないと、入りにくい。 一八。 若旦那じゃあ、ございませんか。 こないだ はどうした、謝れ。 しくじってないのを謝るのも…、船徳の船頭じゃないん だから。 今日は、梅姐さんはいないんですか。 いない。 若旦那が、いず れは梅姐さんと世帯を持つと思っています。 祝言には、鶴亀かなんか踊りま す。 おっ母さんや旦那さんから、祝儀がガバッと頂戴できる。 親父は二年 前に死んでるよ。

 お前、近頃、面白い物を持っているというじゃないか。 珍しいお茶です。  火の上で、よぉーーく焙じる。 お湯を注ぐと、湯気の中から、思い浮べた人 が現れる。 若旦那、何が見たいですか。 犬。 寄席へ行けば、江戸家猫八 がやっている。 亡くなった人でも、いいですよ。 六代目尾上菊五郎。 あ の人は、昭和24年に亡くなっているんですよ。 じゃあ、六代目中村歌右衛 門。 大成駒ですね。 よぉーーく焙じないと、中村福助が出る、患っている そうですが。 (下座から「東西東西」の声) (声色で)「中村歌右衛門でご ざいます、扇雀さん翫雀さん(今や鴈治郎ですが)の襲名で…。」

 噺家は、どうだ、桂文楽。 黒門町の師匠ですね、よぉーーく焙じないと、 ペヤングソース焼きそばが出る。 (菊之丞、一旦、下(モ)手に引っ込んで、 出囃子「野崎」で、小さくなってそろそろと出て来る) (文楽の声色で)「い っぱいのお運び様で、有難う存じます。 前回は血圧が190ございまして、お 休みをいただき、代演が二席やってくれましたそうで…」。

 六代目三遊亭円生。 よぉーーく焙じないと、川柳川柳が出る。 (また引 っ込んで、出囃子「正札附」でヒョコヒョコ出て来る。) (円生の声色で)「毎 度この怪談噺…、新吉が下総に知る辺があるので、いっそそっちへ行こうかと ……、正蔵続いて申し上げます。」

 林家正蔵。 先代の正蔵…、別に他意はない、彦六になった正蔵。 よぉー ーく焙じないと、二木ゴルフが出る、稲荷町の方。 (引っ込んで、出囃子「菖 蒲浴衣」で、前座に肩を担がれて出て来る。前座は師匠に一礼して引っ込む。)  (正蔵の声色で)「さて豊志賀が、この後新吉が女房を持てば、七人までは取り 殺す。」 これは晩年だな。

 ここらで、立川談志。 (また引っ込んで、出囃子「木賊狩」が鳴るが、な かなか出て来ない。しばらく経って、バンダナにサングラスで出て来て、腕組 みをして客席を睨む。) (「待ってました」の声に、)「重荷になるな。 柳朝 にいじめられたんで、円菊をいじめている。」

 生きている人を出そう。 柳家さん喬、平成の名人。 (また引っ込んで、 出囃子「鞍馬獅子」で、下を向いたまま出てくる。(爆笑)) 「銀杏の葉も色 づいて、秋もだいぶ深まって参りましたが、大方は冬になりますから、どうい うことはない。 さようなら。」

 一八さん、下でおかみさんが呼んでますよ。 若旦那、触らないで下さいよ。  行っちゃった、俺もやってみよう。 柳橋のお梅。 このぐらいでは、出て来 ないのかな。 「やい、セガレ!」 死んだ親父だ。 「葬式の時は吉原に行 ってやがって、一周忌にも吉原から遅れて来やがって。」

 よぉーーく焙じないと、若旦那、焙じ(法事)が足りない。

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