柳家花緑の「粗忽の使者」後半2020/01/07 07:23

 これから人助けだ、俺が行ってくるから。 田中の旦那は柔らの先生、三人 力で駄目なんだ、エンマでケツの皮を引きちぎる。 まっぴらごめんねえ、田 中の旦那、三ちゃんにお会いしたい。 仕事場の者が、何用であるか? 先程 はお疲れ様、「いかがでござる治部田氏」というのを、あっしが行って、つねっ てみましょう。 釘なら引っこ抜く、あの旦那のケツなど引きちぎっちゃう。 

では、ご使者の間へ、当家の若侍ということにして。 帯は、後ろで結わく もんだ。 ぐるっと回す。 キュウクツ袋、前に棚がある。 腰板だ、穿き直 せ。 こないだ、ダチの婚礼にこのまま行っちゃった。 そのほうの名は、何 という? トメッコ! トメッコ? 留か…、留太夫、田中をひっくり返して、 中田留太夫ということにいたそう。 田中三太夫に、中田留太夫、お時間まで、 ごゆっくり。 漫才ではないぞ。 言葉を丁寧に、何にでも頭に「お」の字、 終いに「ござる」を付けるように。

 どなたでござったかな? 田中で。 そう、田中氏でござった、して、何の 御用で? ご口上の件でござる、若者でございますが、お次に控えし中田氏(う じ)…。 これ、留太夫、………、トメッコ! はい。 二人だけにして下さ い。

 ヨウ、おじさん、しっかりしろよ、お前。 俺は大工(でえく)だ、大工。  ご口上を忘れて、腹切って死んじゃうっていうから来た、ケツ出せ。 毛が生 えているな、振り向くな、やってやるよ、ソレ! オッ、これは、えけえ力量 をお持ちで。 えかく冷てえ、もそっと、手荒く。 コチコチだね。 ケツ中、 カカトってやつだ。 つかんで、かきまわしてやろう。

 えれえ! 痛み、耐え難き…、思い出してござる。 三太夫殿! して、ご 使者の口上は? 屋敷を出る折、口上を聞かずに参った。